「「ならば・・・死ね」」
化け猫はそういうと僕たちに鋭い爪を向けてきた。
でも僕たちは動かなかった。
何故なら亜璃魔が守護霊である南瓜の精霊、“D”を呼び出し防御していたからだ。
「残念。この仔に敵う仔はいないのよ・・・」
くすくすと笑いながら化け猫に近づいていく亜璃魔。
ぐぅ・・・と猫は怒りの声をあげている。
「ねぇ、可南?コンタクトはずしてもいいかしら?」
「あぁ。思う存分に暴れるといいよ。何せ久しぶりだからね。皆もよく見ておくといいよ。初めてだろう?亜璃魔の眼を見るのは。」
亜璃魔の青眼は、実はコンタクトなのだ。
僕は彼女と初めて逢った時に見せてもらったが、皆は知らない。
彼女は魔女の血筋。
無残にも両親を魔女狩りの奴等に殺され、左目を抉り取られた。
それから彼女は魔女狩りから逃れるため日本にやってきて、祖母の下へ身を寄せたのだ。
そのときにカラコンをすることを進められた。
彼女のその眼は魔女特有だからだ。
血統書付の魔女、というわけだ。
亜璃魔はそっと青いカラコンをはずしていく。
開放されたその瞳は紫色で、妖しく光っていた。
「あれが・・・ほんとの亜璃魔の眼か・・・」
残りのメンバーは驚きを隠せない。
化け猫はそんなもの腐るほど見てきたというふうに落ち着き払っている。
ふふ・・・と、亜璃魔は化け猫に近づいていく。
「初めまして、化け猫サン。可南組一の美少女、亜璃魔が相手でよかったわねぇ。」
嫌味たらしく口をゆがめる姿はかなりの悪人面だ。
メンバーもぽかんとしている。
するといきなり魔術で猫の右手を吹っ飛ばした。
亜璃魔の顔に返り血が飛ぶ。
彼女は其の血をペロリろ舐めると、静かな声で言う。
「まずは一本。引く気になった?ぁたし優しいから降参していなくなるなら逃がしてあげるわよ?」
「ちょっ亜璃魔・・・??」
琴姫が驚きの声をあげる。
「姫、大丈夫。亜璃魔はその気になれば相手の記憶を消せる。」
僕は姫を止めた。
ここからが面白いところだという心底の言葉を飲み込んで。
「「だ・・れが・・・引くか」」
「あぁ、そぉ。」
次に右足を吹っ飛ばす。
化け猫の身体から青い血が噴出している。
化け猫は顔をゆがめてはいるが引く気はないようだ。
すると亜璃魔は左手と左足を一気に吹っ飛ばした。
「「ぐあぁぁぁぁ」」
化け猫の断末魔が響く。
「ぁははっっばぁーか、素直に逃げてれば死ななくてすんだのにねぇ。」
高笑いをする亜璃魔を月が妖しく照らす。
「「・・・・思い出したぞ・・・その桃色の髪・・・あの時の生き残りか・・・」」
「・・・?」
流石の彼女も驚きを隠せず化け猫のそばに身をかがめる。
「「フランスの魔女狩り・・・っ私の御主人様が、幼い桃色の髪の少女の眼を獲ったと・・・・」」
「どういうこと?」
そこにいた誰もが耳を疑った。
もちろん、僕も。
「「ふふ・・・今でもホルマリン漬けにして大切に持ってらっしゃるよ・・・あの方は・・・っ」」
「そう・・・あんたの一味だったのね・・・あたしの眼はどこ??」
「「言うわけがなかろう」」
照らしていた月は雲に隠れ、辺りは真っ暗になった。
僕たちが当たっていた焚き火がただただ赤い明かりを灯していた。
「・・・・じゃぁ、お別れね。さ、よ、な、ら」
くすっと笑う彼女。
「地獄の業火、死者を葬り去るがいい。」
すると、化け猫の身体が一瞬にして砕け紫色の炎が包み跡形もなく消えていった。
彼女の顔についた返り血さえも。
「・・・あたしの眼・・・さがしにいかな・・・きゃ?」
とす、と、僕は彼女の首に陰陽道を捻じ込んだ。
彼女を抱きかかえて焚き火の方へと向かう。
皆一時は驚いたが、今は穏やかな気持ちに戻ったようで、彼女と僕が到着するのを優しい眼で待っていた。
「寝床、作っといたよ。」
姫が指を指す。
僕は有難う、といってそこに彼女を寝かせた。
すーすーと寝息を立てて寝ている彼女は朝まで眼を覚ますことはないだろう。
「これから・・・こんなやな奴等が増えるんだな・・・。亜璃魔をこんな乱すような奴が。」
彼女はこのグループの中でそう簡単に気の乱れない人だと誰もが知っていたのだ。
心の闇は深くても、芯がしっかりしている人だと、僕も思う。
今日の惨劇がほんの始まりに過ぎないということを、
僕らは、思い知った。
「心を強く持たないと、このさき辛いよ?みんな大丈夫かい?」
「「あぁ」」
皆が一斉に返事を返すことは僕はわかっていたけれど。
僕らはもう、後戻りが出来ないところまで来てしまっていた・・・。
なかがき。
なんか微妙にグロくてすいません。
いぁ、こないだ亜璃魔の怖いイラスト描いて、その台詞をどっかで生かそうと考えてたらこうなりました;;
05はもちょっと明るくしたいかな・・・。
てか他のメンバーも喋らせないと・・・(苦笑